2007年10月18日木曜日

空母受け入れ 不安はなお払拭できぬ

 新宮正志室蘭市長が、米空母キティホークの室蘭港への寄港を受け入れると表明した。室蘭港は初めて、道内では小樽港を含めて四回目の空母寄港だ。
 新宮市長は記者会見で「入港を認めざるを得ない」と述べた。
 市長は一週間前、「市民は賛否二分」「大きな不安がある」と駐札幌米国総領事に語ったばかりだ。
 その状況は変わったのだろうか。
 市長が市民の声をよく聞いたうえで、可否の判断をすべき重要な問題だ。説明不足では不安を払拭(ふっしょく)できない。
 会見の言葉だけで、市民が受け入れを納得するのは難しいだろう。
 寄港計画が浮上した八月、市は判断の条件として「核の搭載はどうか」「荷役への影響がない」「施設の支障がない」の三つを挙げた。当然だし、中でも大きな懸念が核の問題だろう。
 日米安保条約で核の持ち込みは事前協議の対象となる。外務省は市の照会に「事前協議がないので、核搭載はないと判断する」と回答した。
 全国の自治体が、類似ケースで問い合わせると繰り返される表現だ。紋切り型の対応こそが、不信を招く。
 核を持ち込むことを認めた日米間の密約を示す公文書が、米国で見つかったばかりだ。政府は、日本の非核三原則の重みを忘れてはなるまい。
 「自治体は米艦の寄港を拒否できない」。政府は日米地位協定を前面に、入港への不安を訴える自治体を説得してきた。室蘭市も別の艦船の寄港時に「市民の不安」を無視された。
 だが、不安は入港を認めない立派な理由だ。不安を払拭できる説明と情報こそ、政府はまず示すべきだろう。
 青森県では昨年、民間用の青森空港を使いたいとの米軍要請を県が断った。外務省が地位協定を盾に再考を促したが、最終的には県知事が拒んだ。
 こういう実例もある。要は、市民の側に立つべき自治のあり方が問われている。
 地位協定があるから拒否できないとの外務省の論理も、説得力に欠けるとわかった。貴重な経験だ。
 寄港時には約四千人が上陸する見込みだが、市は行動予定などを事前に確かめなかった。入港を前提とした質問になるからとの理由だ。事前に十分な情報収集をして判断すべきだった。
 寄港は、北朝鮮をにらんだ道内港の気象条件、港湾情報などを集める目的と専門家は指摘している。軍港化の懸念を否定できない。
 キティホークには、インド洋で海上自衛隊が供給した燃料のイラク作戦転用疑惑がつきまとう。近く退役し、その後継は原子力空母となる。
 市民の拒否感を減らす狙いも込め、「友好親善」の目的に合うよう艦艇開放も行われるという。既得権のように寄港が繰り返されてはならない。
(北海道新聞より引用)

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